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Side 幸次
あれから一度もまともに凛太朗と話せないままただ時間だけが過ぎていった。
凛太朗の傍にはいつも辻がいて、さりげなく俺が凛太朗に話しかけるのを邪魔している。
凛太朗の方もべたべたと辻が身体を触っても嫌がる素振りも見せないし、俺とも一度も目が合わない。
凛太朗の気持ちが分からない。
―――俺はどうするべきなのかな…。
知らず溜め息が出た。
*****
鬱々とした思いを抱えたまま帰宅して、ようやく昨日から開店したコンビニに顔を出した。
そこそこ繁盛していて祖父さんも親父も大忙しだ。
親父はともかく祖父さんには辛い仕事だろう。
俺はバックヤードに入りコンビニの制服に着替えると祖父さんに代わって品出し作業を始めた。
「幸次、お前は手伝わなくていいんだぞ?」
まだ風呂屋を潰してしまった事を俺に申し訳なく思っているのか、祖父さんも親父も俺に対してそんな事を言う。
「なぁーに言ってるの。俺は風呂屋の息子は卒業してもコンビニの息子になったんだから手伝いくらいするさ。それより祖父さんはレジのとこで店内を見ててよ。昔みたいにさ」
そう言ってニっと笑って見せる。
「――そうか、そうだな」
祖父さんもさっきまでのオロオロとした顔が笑顔になる。
そう、俺は番台に座る祖父さんの優しい笑顔が好きだったんだ。
みんなを守っているようなそんな笑顔。
だから自信なさそうな顔なんかしないで俺たちを見守っていてよ。
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