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俺は学校では凛太朗たちになるべく関わらないようにして、家に帰るとコンビニで無心で働いた。
そして疲れ果ててベッドに入るとすぐに寝てしまう。
そんな生活を送っていた。
いくら考えても自分がどうするべきか分からなかったからしばらく時間をおいてみようと思ったのだ。
それでも同じクラスだからいくら避けていても視界に入る凛太朗たち。
あれから3か月過ぎた今でも好きだと思う。
半年一年、何十年経ってもきっと変わらないだろう。
俺は凛太朗の事が好きだ。他の誰かを好きになる事なんて絶対にない。
でも、凛太朗が俺じゃなくて辻を選んだと言うのならそれに文句を言える立場ではない。
そう思うのにズキリと心が痛む。
せめて友だちとしての距離に戻れたら―――。
ふと視線の先に凛太朗の姿を認めた。
今日は一人のようだ。
視線を逸らそうとした瞬間、凛太朗の身体がぐらりと傾いたのが見えた。
俺は慌てて駆け寄り凛太朗の身体を受け止める。
「凛太朗!」
「――佐倉、く…」
真っ青な顔で俺を見上げる凛太朗。すぐに俺の腕の中で意識を失ってしまった。
なんで、どうして、こんな…?
俺は凛太朗をお姫様抱っこして保健室へと運んだ。
保健の先生は不在で、俺はベッドに凛太朗を静かに降ろして布団を掛けた。
「…………」
凛太朗は静かに寝息を立てて寝ている。
そっと額に手を当て熱を測ってみる。
熱はないようだ。
顔つきも穏やかだし、少しだけ顔色も良くなっている。
―――寝不足なだけ、か?
久しぶりに至近距離で見る凛太朗の顔。
目の下のクマ。少しこけてしまった頬。
辻と幸せになっているんじゃないのか?
―――こんな……、なんで……?
そっと頬を撫でる。
辻は凛太朗にこんな風にいつも触れているんだろうか。
もっと色んなところにも―――――。
もやもやと黒い想いが胸中に渦巻く。
指先が凛太朗の唇に触れる。ふにふにと柔らかい感触。
思わずその唇に吸い寄せられて―――――。
―――ダメだ。こんな寝ている相手に何をしようというのか。
眠る凛太朗の唇に自分の唇が触れる寸前、思いとどまる。
俺はもう一度だけ凛太朗の頬を撫でて、眠る凛太朗を一人残し保健室を去った。
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