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風呂屋の息子
今にも潰れそうな風呂屋の息子、それが俺、佐倉幸次だった。
子どもの頃から自分は風呂屋『桜の湯』の跡を継ぐのだと言い聞かせられてきた。手伝いもしてきたし、覚悟も決めていた。
俺は友人である楠凛太朗に想いを寄せていた。
凛太朗とは小学3年生の時同じクラスになったのがきっかけで仲良くなった。
ひょろっとしてなよっちい凛太朗を姫を守る騎士みたいなつもりで守ってきた。
高校3年生になった今もそれは変わらないし凛太朗の事を恋愛的な意味でずっと想っている。だけど凛太朗は男で、俺も男で、いくら好きでも俺は風呂屋の息子だ。
男も女も裸になって利用する風呂屋だ。
女の方は番台からは見えないが男の方は見えてしまうのだ。
俺は決して男を好きなわけではない、と思う。
ただ凛太朗の事が好きなだけだ。他の男にときめいた事は一度もない。
だけど世間はそうは見てくれないだろう。
風呂屋の息子がゲイで番台に座っているとなると客は来なくなるかもしれない。
だから俺は、凛太朗が俺に告白してくれたのに―――断らざるをえなかった。
「友だちとして、今まで通り接してくれると嬉しいな…」
目を真っ赤にさせて涙をこらえて口角を引き上げ、無理に笑う唇が震えている。
今すぐにでも抱きしめたかった。
俺も好きだって言ってしまいたかった。
お前を守るって決めてたのに、俺が泣かせてしまうなんて―――。
「――――ごめん」
それしか言えなくて、奥歯を噛みしめ両手をぎゅっと握りしめた。
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