最恐王子、花岡南朋の秘密

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さっきまでの微笑みはゼロ。 すでに表情を失っている。ぎょっとして冷や汗をかいた。花岡南朋が執着するものは、この世でただ一つだ。 「こいつにか?」 どんな言い草だ。口に出せずに引きつったまま笑っている。 「そうです。南朋さんの、秘密探しに付き合ってもらっていました」 「へえ?」 ぎろりと睨まれた。 大した話はしていない、はずだ。苦笑して無意識に首を横に振っていた。 暴れる花岡南朋をとめられる人間なんて見たことがない。 警察に捕まらなかったのは、藤堂周の存在があったからだ。それでなければ、とっくにろくでもない仕事についていただろう。 すべてを投げうってでもほしいものを手に入れた男が、いまだに一人の女相手に必死になっている。 滑稽というよりも、狂気的にすら見えた。 あのまま難聴が続いていたらどうなっていただろうか。南朋は、藤堂周を囲って、世間から隠してしまっていたかもしれない。危うい熱意は、この折れそうな女を縛り付けて束縛していたかもしれない。 「どんな秘密だ」 「南朋さんが、私のことを大切にしてくれていたことしか、わかりませんでした」 「……そうか」 すべて、藤堂周の絶妙なバランス感覚で平穏が保たれている。
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