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クマのぬいぐるみ
愛美は池の縁に立っていた。
池の中を覗き込むように身を乗り出す。
ふだん入るお風呂と違い池の水は濁っていて深さがわからない。
「おねえちゃん。そっちに行けないよぉ」
愛美の足はすくんでいる。
「愛美ちゃん。大丈夫よ。こっちにおいで」
女の子は池の中央に立ち、愛美を手招きしている。
「おねえちゃんがこっちにきてよぉ」
愛美は女の子に向かって叫ぶ。
「愛美ちゃんは水溜まりが好きでしょ」
女の子の声が頭の中で聞こえた。その声はとても優しい。
「うん」
「長靴を履いてるから大丈夫だよ。愛美ちゃん、ぴょんって跳んでみて」
女の子が池の真ん中でやってみせる。
「ぴょん。ぴょん」
愛美が声に出してその場で跳ねる。だんだん楽しくなってきた。
「そう上手。とっても上手よ。愛美ちゃん、こっちにぴょんしてみせて。せ~の……」
女の子の声にあわせて愛美は力いっぱい跳んだ。
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