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『自分が女で嫁になる』とはどうしても想像が及ばない陽光だった。
柊も又、そこまでは想像をしていないようだった。
ニヤニヤ笑いをあっさりと収めた。
「あぁ。――でも、おれは男でも女でも『冬に生まれた子供』だから『柊』と名付けられることは決まっていたけどな」
柊がその名前以外であることにも又、陽光は想像がつかない。
その青あおとした葉を護るために棘を生やすほどに『用心深く』て『先見の明』があるくせに、――いや、あるが故に傷付きやすく『保護』してやりたくなる柊。
陽光はその体を温泉の湯越しに抱きしめた。
「――それこそ生まれる前から」
自分を顧みて笑う口元に軽く口付けた。
そのすぐ後で柊が続ける。
「もしも女同士や男同士だったとしたら生涯の親友として、一緒にいてやってほしいって」
「どうして、桂一おじさんはそこまで言ったんだ?」
いくら自分の父親と親友同士だったとしても、柊の父親の頼み様はただ事ではないと陽光は思う。
柊はすっかりと、全てを知っているようだった。
「おれが、最初で最後の子供だって分かっていたから」
「どういう意味だ?」
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