労いの一献

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 色味を抑えているとはいえ、赤い着物をああも着こなせる四十手前の男を陽光は他に知らない。  しかし柊の本性は外見などではなくその名が表していると、生まれた時からの付き合いであるが故に思う。 ひどく鋭い、尖った棘を持っているのだ。  元もと植物の柊は(ひひら)き、――その葉に触れた手がヒリヒリと痛むことから名付けられたという。 陽光がそのことまでをも知ったのならば、きっと深くうなずいていたことだろう。  陽光は真っ黒な酒瓶を柊の方へと差し向けた。 「おまえ、頼られてるんだよ。俺なんてまだ修行に放り出されている身の上だ。いい加減四十も近いっていうのに」 「・・・・・・」  柊は無言のまま、でも素直にぼやく陽光へと盃を差し出した。 さすがに二十代の頃と全く同じというわけにはいかないが、陽光の容姿はそう変わっていないように柊には見える。 直接会うのが年に一、二回になった最近でもそう思う。 ――むしろガッシリとした大柄な体格に落ち着きが備わってきた今がいい。とないものねだりの柊は本気で羨ましかった。  無骨な陽光の手で丁寧に満たされた酒を、柊はこれ又一気に飲んだ。 酒の香りと共に言葉を放つ。 「――この世には全てに時があり、それぞれ時期がある」 「何だそれ?」
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