離れ

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 『銀柊荘』そのものがけして大きな旅館ではない。 客室はわずか十室にも満たない。 基本、予約でさえ飛び込みの客は丁重にお断りをしている。 原則は紹介制だった。  そうなると自ずと客層は限られてくる。 成金などではなく筋金入りの、――いわゆる上流階級と称される人びとだった。  柊が生まれた岸間の家は代だい素封家(そほうか)だった。 この『銀柊荘』は元もと逗留する来客をもてなすために建てられた、イマドキで言うところのゲストハウスだった。 時代は下り旅館業を営むようになり、現在へと至っている。
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