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夢の後先、続く夜明け
陽光は真夜中過ぎ、夢うつつの内に三度柊と交わった。
朔の暗い夜の底で、自分の体の上で思うがままに揺蕩う柊の白い体はまるで月の化身の様に陽光の目には映った。
地上へと下りてきた天女を帰さないようにと、その羽衣を懸命に隠し通そうとした愚かな男のことをけして笑えないと思う。
柊を自分の腕の中にずうっと留めておきたくて、片時も手放したくなくてその薄い体を穿つ烈しさでただひたすらに抱いた。
柊は睦言をささやく余裕もない陽光に応じて、その烈しさをも全て丸ごと受け止めうけ入れてくれた。
柊が溢れんばかりの熱をその体に心に湛えているのならば、自分はそれ以上にだと陽光は知った。
――『痛感』という言葉通りに、痛いくらいに思い知らされた。
よく今日のきょうまで、暴発をせずに何とか持ち堪えてくれたものだ。
そんなことになれば仕事でだったら大事故、はっきり言って大惨事だと、どこか他人事のように陽光は思い至った。
感心――、いや、感動すらした。
そのままの、実に満ち足りた気持ちで陽光は眠りへと就いた。
しかし、迎えた朝の同じ布団の中のどこにも柊の姿はなかった。
羽衣ならぬ、枕だけを陽光の隣へと残して――。
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