夢の後先、続く夜明け

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 あのまま陽光の隣で同じ朝のおなじ目覚めを迎えていればよかったと、心の底から悔いたがもう遅い。 せめてもの代わりの、お詫びの気持ちを込めて柊は陽光の厚い胸板へと両腕を巡らせる。 両の肩甲骨をすっぽりと覆うようにして手のひらを当てた。  うなだれて、わずかに傾いている陽光の耳へと柊はささやきを落とす。 「おれもだ。目が覚めて隣に寝ている陽光の顔を見てもすぐには信じられなかった」 でも、と言葉を残した。 「でも?」  そうしてから柊は心持ち、上体を離した。 陽光から離れるためにではなかった。 まるっきりその逆――、よく見るためにだ。  柊が陽光を真っすぐと見据える。 いつもは何事にも動じなさそうな、落ち着き払った陽光の顔には焦りや迷いがはっきりと浮かび上がっていた。 不惑(惑わず)の四十路ももう真近だというのに。  柊は自分も又陽光と同い年で、――全く同じだと思う。 だから、そんな自分へと言い聞かせるためにもはっきりと言い切った。 「後にも先にも夢なんかじゃない。現実だ」 「柊・・・・・・」 「これからずっと続いていくのは、陽光とおれと一緒に生きていく現実だ」
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