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『破顔一笑』という言葉そのものに笑う柊の顔にその姿に、陽光は昨夜の空に咲いた花火を重ねる。
いや、それ以上に華やかで鮮やかで、まるで咲き誇っているようだと思い直す。
ほとんど見惚れている陽光に、その眩しいまでの笑顔のままで柊が持ち掛けてくる。
「朝の膳が運ばれて来る前に風呂に入らないか?離れの露天風呂、まだ見ていないだろう?」
「あ、あぁ・・・・・・」
「――それに他にも陽光に見てほしいものがある」
柊が言う『見てほしいもの』が何を示しているかが、陽光にはまるっきり見当が付かない。
それにもかかわらず陽光はただ、うなずいた。
後にも先にも夢ではないというのに、それこそ夢心地の内に――。
終
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