朝風呂

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朝風呂

 柊が陽光へと言った『見てほしいもの』とは、自分の素裸のことだったのだろうか――? 立ち上がった柊はその場で、陽光がそう思ってしまうほど極めて自然に身に着けていたものを脱ぎ出した。  藍色の丹前も、白地に濃い緑の柊の葉模様の浴衣も。 そして、浴衣を結わいていた揃いの緑色の角帯も――。 ピッタリとした下着すらも全てがスルスルと、自ら柊の体から剥がれ落ちていったかのように陽光の目には映った。  全裸になった柊がわずかに体を(ひね)り、陽光を顧みる。 「陽光」 名前を呼ぶ声と共に、柊の右腕が後ろ手に差し伸べられてきた。 「露天風呂に行こう」 「あぁ――」  反射的にその手を取ろうとして、陽光はとっさに(とど)まる。 慌てて自分の浴衣へと手をかけた。 こちらの方はほとんど羽織っただけの有り様だったので、柊のよりもさらに簡単だった。 ほんの一瞬で畳の上へと落ちた。  足場が悪いわけでも暗いわけでもないのに、陽光は『銀柊荘』の主の手ずからに案内された。 露天風呂は全くの野ざらし雨ざらしというわけではなかった。 四阿(あずまや)の様に屋根があった。 小さいながらも茅葺きだった。
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