朝風呂

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 長いため息とともに、柊の言葉が吐き出された。 「あぁ――、気持ちがいい。今日もよく晴れている・・・・・・」  そこで柊は庭へと目を遣った。 冬の夜風に揉まれ続けた洗いざらしの空の青さと植えられた常緑樹(ときわぎ)の緑、そして未だに溶けずに残ったままの雪の白との対比(コントラスト)が見事なまでの鮮やかさだった。  我知らずの内に柊は笑っていた。 その表情に棘はどこにも、ない。 「やっぱり陽光は晴れ男だな」  昨夜と同じようなことを告げてくる柊の顔は口元は、やはり同じはずなのに全く違う。 違うものの様に陽光には見える。 一層透明(クリア)に、しかも柊自身が輝いているのだ。 夜の闇の(もと)でか、朝の光の中でかの違いだけではないのだろう。  柊がふと何かを思い出したかのように、目を湯舟へと移した。 腕を伸ばし、何かを引き寄せる。 「一口酒でもどうだ?」  陽光が柊の手元を見ると、湯面には木桶が浮かんでいた。 中には陶製雪ダルマとお猪口が二個、収まっている。  柊は陽光にお猪口を手渡し、雪ダルマの頭のてっぺんに差し込まれているコルク栓を抜いた。 そして、陽光へと傾ける。 「――本当に酒なのか?」 「飲めば分かるさ」
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