0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
数年ぶりに我が家に雪が積もった。
といってもここは雪国ではない。積もったといっても5センチ程度だ。
俺がまだ幼い頃はこれくらいはよく降ったものだ。先日他界した父と雪遊びをしたことを思い出す。
この頃は暖冬のせいか、積もるほど降るのは数年に一回程度だ。
5歳になる息子にははじめてのこと。
一面の雪景色に大はしゃぎだ。
息子は雪と戯れてキャッキャと笑っている。
小さな手で雪をせっせとかき集めて、まずは雪だるまをつくる。小さな雪だるまがいくつもできた。
それが終わると今度は雪合戦だ。雪を固めてエイッと投げ合う。
息子の投げた雪が見事に俺の顔に当たり、息子は大笑いだ。
次に息子はまだ誰も歩いていない場所を見つけて歩き出した。振り返ってはキャッキャと笑っている。
雪に自分の足あとがつくことが楽しいようだ。
「ぼくの足あとおお」
といっては大はしゃぎだ。
息子は俺にも歩けと要求する。
歩いてやると
「パパの足あとおお」
といっては大はしゃぎ。
2人で雪に足あとをいっぱいつけた。
それでも足りず、息子は妻の靴をわざわざ履き変えて戻ってきた。
妻の靴で雪の上を歩く。
「ママの足あとだあ」
といってまた大はしゃぎだ。
飽きることなく足あとをつけては振り返る。
ただでさえ雪ですべるかもしれないのに、ブカブカの妻の靴では危なっかしいが、あまりにも楽しそうなので見守ることに決める。
その息子が突然走り出した。
「おじいちゃん。来てくれたの」
そういってうれしそうに見上げて、ピョンピョン跳ねている。
「おじいちゃん。ねえ。おじいちゃん」
息子は何をいっているのか。
「おじいちゃん。遊ぼうよお」
そこには誰もいないのに。
息子は雪で覆われた地面を見て不思議な顔をする。
「あれ?おじいちゃん、足あとないね」
(終わり)
最初のコメントを投稿しよう!