雪の訪れ

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 数年ぶりに我が家に雪が積もった。  といってもここは雪国ではない。積もったといっても5センチ程度だ。  俺がまだ幼い頃はこれくらいはよく降ったものだ。先日他界した父と雪遊びをしたことを思い出す。  この頃は暖冬のせいか、積もるほど降るのは数年に一回程度だ。  5歳になる息子にははじめてのこと。  一面の雪景色に大はしゃぎだ。  息子は雪と戯れてキャッキャと笑っている。  小さな手で雪をせっせとかき集めて、まずは雪だるまをつくる。小さな雪だるまがいくつもできた。  それが終わると今度は雪合戦だ。雪を固めてエイッと投げ合う。  息子の投げた雪が見事に俺の顔に当たり、息子は大笑いだ。  次に息子はまだ誰も歩いていない場所を見つけて歩き出した。振り返ってはキャッキャと笑っている。  雪に自分の足あとがつくことが楽しいようだ。 「ぼくの足あとおお」 といっては大はしゃぎだ。  息子は俺にも歩けと要求する。  歩いてやると 「パパの足あとおお」 といっては大はしゃぎ。  2人で雪に足あとをいっぱいつけた。  それでも足りず、息子は妻の靴をわざわざ履き変えて戻ってきた。  妻の靴で雪の上を歩く。 「ママの足あとだあ」 といってまた大はしゃぎだ。  飽きることなく足あとをつけては振り返る。  ただでさえ雪ですべるかもしれないのに、ブカブカの妻の靴では危なっかしいが、あまりにも楽しそうなので見守ることに決める。  その息子が突然走り出した。 「おじいちゃん。来てくれたの」  そういってうれしそうに見上げて、ピョンピョン跳ねている。 「おじいちゃん。ねえ。おじいちゃん」  息子は何をいっているのか。 「おじいちゃん。遊ぼうよお」  そこには誰もいないのに。  息子は雪で覆われた地面を見て不思議な顔をする。 「あれ?おじいちゃん、足あとないね」                            (終わり)
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