めぐる

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「僕が住んでいた頃とはだいぶ様子が違うんだけどね。例えば」 汐見が一点を指差した。そこにはモノクロを基調にしたカフェや大手チェーンのコンビニ、テイクアウトの唐揚専門店が並んでいる。 「あの辺にあったはずの洋菓子店は10年ほど前になくなった。幼い頃、買い物からの帰り道でたまにお店手作りのソフトクリームを母親に買ってもらって、兄さんと交互に回して食べたりしたんだけど」 「ご兄弟がいるんですね」 「うん、2つ上の兄がひとり」 「ということは、家族構成はご両親とお兄さん、汐見さんの4人ですか」 「そうだよ。今は僕も兄も実家を出ているけど」 汐見の街案内を受けながら駅前の都道を西方向へと進むと、道沿いに大型スーパーや衣料品店、全国チェーンの飲食店が軒を連ねていた。 絶えず自動車が歩道を横切り、店舗の駐車場へと入っていく。 聞くと、汐見の幼い頃にはここまで大型店は進出していなかったという。都心へのアクセスが良い郊外の新興住宅街として、ここ十数年で開発が進んだのかもしれない。
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