めぐる

8/35
前へ
/230ページ
次へ
20分ほど歩いたところで、都道から片側一車線の細い道に曲がった。 1つ目の信号の先に、緑色のフェンスが見えた。その内側には広い砂の庭のようなものがある。 「あの信号の先にあるのって」 「ルーツ巡りの最初は、僕の通っていた幼稚園。実際に訪れるのは卒園以来かな」 横断歩道を渡ったところで歩調を緩める。 休日の幼稚園には人の気配がなかった。 北側に2階建ての建物が、西側に平屋の建物があり、その2軒は赤い屋根のついた渡り廊下でL字に繋がっていた。 園庭には機関車や小屋の形をした遊具、カラフルな滑り台やシーソーが並んでいる。 「当時は3階建ての城みたいな建物型の遊具があったはずだけど、もう撤去されたのか。メンテナンスが大変だったのかな」 「3階建てのお城ですか!?」 「幼稚園時代の記憶だから、今考えればさほど大きな遊具じゃなかったかも。今度実家に行ったらアルバム見返そうかな」 フェンスの外側を辿るように歩きながら、彩里は汐見に尋ねた。 「幼稚園時代に思い出深かったことはありますか?」
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加