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「何せ30年近く前のことだから断片的な記憶しかないけれど、工作の時間のことはよく覚えてる。クラスの皆で大量の段ボールに色を塗って、巨大なライオンやピラミッドを組み立てたのが楽しかったな」
「手作りサバンナですか。凄いですね」
幼稚園の建物の横で立ち止まると、彩里は窓の奥を覗いた。
そこにサバンナは無かったが、折り紙や画用紙を切って作られた動物のキャラクターが壁に飾られている。可愛らしい教室だった。
「桜井さんは幼稚園に通ってた?」
「私は保育園でした。お芋掘りと遠足、あとは避難訓練の記憶しかないです」
「珍しいね、よっぽど思い出深い避難訓練だったの?」
「自分でも不思議です、ただ園庭に逃げるだけだったのですが。2階から普段は使わない緊急脱出すべり台的なもので下りたからでしょうか」
角を曲がって幼稚園の裏手に回ると、駐車場に送迎バスが停められていた。
保育園に通っていた身からすれば、ポップでカラフルなラッピングバスでの通園が羨ましくもある。
そのことを汐見に話すと「自宅が近いから乗車時間は短かったよ」と笑った。
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