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汐見は様々な思い出話をしてくれた。
夏祭りで園庭の中央にやぐらが建ち、室内では輪投げや的当てなどの縁日を模したゲームが催されたこと。
年中の時のお遊戯会は、白雪姫の演目で小人を演じたこと。
毎年のクリスマス会で大きな苺の乗ったショートケーキを食べたこと。
一周し終えて元の信号前に戻ると、汐見が次なる目的地を切り出した。
「さてと、幼稚園はこんな感じかな。次は小学校に行こうか」
*****
壁面が黄色とクリーム色で統一された住宅団地を抜けた先に、汐見の卒業した小学校はあった。
「今通り過ぎた公営団地には、クラスの半分以上が住んでいた。当時が一番児童数が多かったから、今はもしかしたら住民の年齢層が変わって、逆に小さい子のいる家庭は少ないかもね」
「なるほど。そして、こちらが汐見さんの通った小学校ですか」
「うん、やっと着いた。そこそこ遠かったね。足痛くない?」
「歩くの好きなので大丈夫です」
辿り着いた校門には南京錠が掛けられていて、中には入れない。
幼稚園を巡った時と同じように、フェンスで仕切られた外側を歩き始める。
校門の横にある、ひと冬を越えたプールは濁った深緑色になっていた。
「小学校は懐かしいですか」
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