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校庭の外周を廻り終えて角を曲がると、教員用の駐車場が現れた。
校舎の裏側の窓からは廊下が見える。内観は彩里が通っていた小学校ともよく似ていた。
壁に掛かった絵画作品や横一列の傘立ての懐かしさが胸をくすぐる。
「ちなみに廊下にまつわる思い出はありますか?」
「旧校舎に立ち入ることができる最終日、廊下の端から端までチョークで線を引いたり落書きをしたこと。取り壊される直前だったからこそ、普段なら怒られるような好き勝手を出来たんだよね」
無茶振りに近い質問にも即座に答えてくれる辺り、頭の回転の早さが如実に表れている。
さすがは営業職の会話術だと彩里は脱帽した。
「給食で一番好きな献立は何でした?」
「揚げパンと、あとはさつま芋の入った汁物も気に入ってたな。桜井さんは何が好きだった?」
「私は焼きプリンタルトと、ひな祭りの日に出るひしもちです」
「もしかして桜井さんって甘党?」
「かもしれないです」
話しているうちに再び正門まで戻ってきた。
「よし、次は中学か。小学校のすぐ先、歩いて2分くらいの所にある」
そう言って汐見は南の方を指差した。
住宅が道路の両側にずっと続く先、丁字路の突き当たりに校門らしきものがぼんやり見える気がする。
「もしかして少し見えてる所ですか」
「うん、あれが母校の中学」
「近いんですね」
2人は中学校を目指して歩き始める。
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