めぐる

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突然質問をやめたものだから、汐見は不思議そうに彩里を見た。 「どうかした?」 「あ、いえ」 彩里はハッと我に返った。 「優秀だし沢山頼られるし、とにかくキラキラしていて、私とは住む世界が違うなぁと思いまして」 「僕は全然、そんなことない。むしろ兄さんの方がずっと出来る人だった。成績は常にトップで生徒会長も務めていたけど、決して堅苦しくなくて、むしろ自由な人だった」 「駅前のソフトクリーム分けっこの話で出てきたお兄さんですね。仲は良いんですか?」 「たまに連絡は取るよ、今はアメリカに住んでいるから流石に会えないけど」 「アメリカに!?」 「大学を卒業してしばらく外資系で働いたけど、世界を広げたいって単身テキサスに旅立った。現地で日本人と結婚して、今は子供が1人いる。向こうでの仕事も順調みたいだし、僕にとって自慢の兄だよ」 「ドラマチックな人生ですね……」 汐見兄弟の華麗なる活躍具合にもはや放心してしまう。
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