めぐる

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何せ狂犬は、運動公園で吐くまで走り続けるトレーニング狂なのだ。 「座ってて、今日ずっと歩かせちゃったし。何飲みたい?」 「では、お水で」 「緑茶、紅茶、ほうじ茶、コーヒー。温かいのと冷たいのではどれが好き?」 「……温かいほうじ茶を、お願いします」 初対面の時もそうだったけど、汐見さんは本当にこういう気遣いに長けている。 彩里はリビングの中央に置かれた白いローテーブルを前に正座した。 行儀が悪いと思われないよう、こっそり目だけを動かして室内を観察する。 全体的に物が少なく、シックな印象の部屋だ。有り余る部屋数にもかかわらず、典型的な一人暮らしのワンルームのようにベッドや衣装ケースもこの空間に置かれている。 東側の壁際、3段の黒いローチェストの上に気になるものを見付けた。 「CDステレオをお持ちなんですね」 「今どき珍しい?」 「懐かしいです。小中学生の時は学校で合唱の時間にCDを掛けたりしましたけど、もう10年以上触れてないです」 汐見は両手に持っていた2つのマグカップをテーブルに置いた。 いずれのマグからも薄い湯気がたっている。
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