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「久し振りのステレオ、使ってみる?」
「えっ、いいんですか!?」
彩里は汐見の隣に並んでステレオを覗き込む。
「今入れっぱなしのCDで良ければ。これが再生ボタンだよ」
汐見に示されたボタンを押すと、機械の内部でキュルキュルとCDが回る音がした後、ピアノ演奏が流れ始めた。
それはクラシックとも現代音楽とも違った。
心が落ち着くゆったりとした曲調で、しばらくすると再び最初の同じ旋律から始まる。何番かある曲なのかもしれない。
聞いたことがないはずなのに、何故か懐かしささえ感じた。
「これは何の曲ですか」
「日本の唱歌の『夏は来ぬ』で、本当は歌詞のついた歌だけど、今のはピアノ独奏バージョン。僕が高校時代に初めて聴いて、それ以来一番好きな曲なんだ。運命の始まりになった音楽でもある」
「運命の始まり?」
彩里が鸚鵡返しに尋ねると、汐見は頷いた。
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