めぐる

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確かにそれは困った悩みだ。 突然のキャンセルは迷惑になり得るし、旧友との交流の場に代打として狂犬を投入した日には縁の切れ目となってしまう。 「では、休日は普段何をしていますか?」 「掃除や洗濯、食料や日用品の買い物に半日くらいを費やしているかな。空いた時間で音楽を聴いたり、本を読んで過ごしている。あとは実家に顔を出したり」 「最近も出張のお土産を渡しに行ったって言ってましたっけ。親孝行ですね」 「いや……」 汐見は少しの間、何かを迷ったように話を止めた。 「親孝行っていうより、過去に両親を落胆させたことがあるから、未だに埋め合わせたいのかもしれない」 「埋め合わせ?」 「うん。高校受験で兄と同じ男子校を受けて、落ちた」 「えっ?」 控え目に聞き返すが、内心ではひどく驚いていた。 つい1時間ほど前に訪れた高校は、本意ではない学校だったのだ。別の高みを目指した果ての挫折だった。 「ルーツ巡りの時に話せば良かったね。隠し事みたいになっちゃった」 「あ、いえ……」 「『城北大学時代に、凡人には越えられない壁があると知った』って話したよね。あれも本当だけど、高校受験で一足先に思い知らされていた。これが僕の限界だったんだ、と」
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