たどる

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ルーツ巡りの翌週の日曜日、汐見からメッセージが届いた。 『今日10時(厳しければ連絡しろ)』 『立大前駅北口改札集合』 狂犬の方だとひと目で分かった。前回と同じパターンだ、突然かつ最低限の連絡。 運動公園で一緒にジョギングをした前回、最後に激怒させてしまった。あの時馴れ合いはお断りスタンスだったのに、どういう風の吹きまわしだろう。 そんなことより、と彩里は棚の上に置かれたデジタル時計を見遣る。 集合時間に指定された10時まであと40分しかない。六つ葉荘から最寄り駅までは歩いて20分、そこから立西大学前駅まで電車で10分以上は掛かる。 彩里は慌てて立ち上がった。 どうせ会うのは狂犬の方なのだ、メイクは割愛、髪もとかすだけで良しとする。今着ている長袖白シャツにジーンズは、外を歩くのに問題ない服装だろう。 手に持っていたスマートフォンをズボンのポケットに捩じ込む。仕事用の鞄からショルダーバッグへ財布を移すと、家を飛び出した。 *****
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