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「その威圧的なの……抑えてほしいです」
「あぁ?」
「それです、それ!」
彩里の指し示しているところは伝わったようで、汐見は頭をガシガシと掻くと、幾分語気を和らげて「行くぞ」と言った。
*****
まさか、さほど日を開けずに再び同じ駅へ、同じ人物と戻ってくることになるとは思わなかった。厳密には同じ人でないのだけれど。
先週の記憶を取り戻そうと周囲を見回している間に、汐見は上着のファスナーを一番上まで閉める。立てた襟で顔の下半分が隠れた。
「えっと、幼稚園が確か大通りを西へ」
「ガキ時代は飛ばしていい。小学校から行くぞ」
「あ、はい」
彩里は現在地から最寄りの小学校でルート検索をかける。幼稚園から小学校へ行った時の 道さえうろ覚えなのに、駅から直接どう行けば良いかなんて分からなかった。
「えーと、北ですね。あっちです」
「行くぞ」
そう言って汐見がズンズン先へと歩き始める。これではどちらが先導人なのか分からない。
地図を頼りながら、何とか小学校には辿り着けた。道中、雑談を交わすことは当然なかった。
「こちらが汐見さんの通っていた小学校です」
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