紫苑 chapter.0

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紫苑 chapter.0

パタッ…パタッパタッ…… パタッ…パタッパタッ…… カララララッ… 「入るよぉ~。」 この足音と間延びした低い声。 僕の担当医の秋津先生だ。 「先生、おはようございます。」 「おはよ~さん、(りつ)くん。 調子はどうかなぁ?」 「なんともないです。元気です」 「うんうん。それが一番だからねぇ」 じゃあ熱計ろうね、と言って 僕の右手にひんやりした体温計が 乗せられた。 「そういえば、今日は土曜日だねぇ」 先生の言葉に少し顔が緩む。 「面会、できますか?」 「うん、問題ないよ~。」 「やった!」 ピピピッと体温計が鳴る。 「よし。じゃあ、また何かあったらよんでねぇ~。」 楽しんで、と言い残すと先生は またあの足音を立てて去っていった。
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