紫苑 chapter.0

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おそらく花びらだろう。 鼻先をくすぐった。 これだけ近付けても、 色も形も見えないけれど。 君と同じ名前の花ならば きっと可愛らしい花なんだろう。 僕の認識できる唯一のこの色が 黒だと教えてくれたのも君だ。 カララララッ…と 音がして彼女が戻ってくる。 「せっかくの週末に毎週来てもらってなんだか申し訳ないな。」 「あたしが来たくて来てるから、 律くんは気にしないでいいの。」 「ありがとう。」 君と出会ってから本当に楽しいんだ。 そんな言葉を含ませて礼を述べると 彼女はふふっと笑った。 「でも、無理はしないでね。 僕と違って君には学校も友だちもあるんだから。」 「うん、大丈夫。」 正直、あんまり馴染めてないんだ、 と困ったように笑う声。 「通院で休むことも多いし、あんまり激しい運動もできないしさ。」 「そっか…」 「正直、週末に律くんと話しに来るのが一番の楽しみなんだよね!」 「僕も早く週末にならないかって、 いつも思ってるよ」 お世辞とかじゃないからね、 と付け加えると えへへっと照れたような笑い声が返ってきた。
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