5人が本棚に入れています
本棚に追加
美咲が取り出していたものはスプーンでもフォークでもなく、ナイフだった。制服は刺したところが赤く染まっていて、美咲の頼んだプリンとティラミスのセットにも、沢山垂れている。
昨日よりグロテスクではないものの、美咲が苦しそうな顔をしているのは比べ物にならないほどしんどく見ていられなかった。
違う、違うんだ。
俺はどうして、あんな心無い事を言ってしまったんだ。相手は彼女だ。相手は美咲だ。相手は昨日自殺した奴なんだぞ? ただでさえ傷ついていたはずなのに、俺はどうしてわからないんだ。言葉に触れることない感情が頭の中で沢山浮かび上がる。
調味料の追加に来た店員さんが、こちらの様子に気付いて悲鳴を上げる。その声を聞いた店員さんがまた出てきて、パニック状態のファミレス。
やがて、美咲は後ろの椅子にもたれ掛かり、苦しい顔のままピクリとも動かなくなった。
ああ、俺は、美咲のことを何も理解していないじゃないか。
最初のコメントを投稿しよう!