2人が本棚に入れています
本棚に追加
もうお分かりと思うが、この妻が電車で僕が惚れた女性。あの後、二人で喫茶店で話をした。実際は話をしていたのは僕の方で、彼女はほとんど僕の話を聞いていただけ。うなずいている彼女の表情から、少しずつ心を開いてくれているのだと感じていた。
後日、妻はいった。
「あの時、変なナンパ野郎が来たなとは思ったけど、私、すごくいろんなことがうまくいかない時期で、もうどうでもいいやって人生に絶望していたの。」
そうだったんだね、そういって僕は聞いていたが、内心は違う。
知っていたから。
だって、あの時、妻の足跡はビルの屋上でなくなっていたから。
最初のコメントを投稿しよう!