じっくり落とすダッチコーヒー

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「だが、俺は悪徳とは一言も言ってない」 「……本当ですか?」  少し疑ったようにしながらも、亜子はドアノブに掛けていた手を下ろして再びカウンター前に戻る。 「適当な仕事はしない。だが、依頼料とは別に成功報酬は上乗せで貰うぞ。騙されて金をとられたんだろう、払えるのか?」 「法外な値段でなければ大丈夫です」 「へぇ、羽振りがいいな」  決して安いとは言えないだろう報酬を、二回騙されているにもかかわらず成功させれば払うと言い切る亜子に今度は男が訝しむような視線を向けてくる。  亜子は見た目と実年齢にギャップはないため、若い身空でそんなお金をどこから調達するのかと勘ぐられたのだろう。それは気持ちのいいものではなく、亜子はむっとした表情を隠さなかった。
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