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二人を繋ぐ鎖を外す為、元ドッグキャラバンのメンバー――。 キャンディとモンボーを探す旅が始まった。 当面の目的ができた私たちは、商人の町を出て北に向かった。 ラビリンスでは珍しく、平坦な荒野が広がる広い空間だ。 九歳の頃、私はガガンバーや仲間たちと長旅に出た。 旅には慣れたはずだが、当時の移動は主に作業用ロボだった。 徒歩だと照り付ける人工太陽の直射を浴びることになり、なかなかに辛い。 「なぁ、ムゥロ。作業用ロボを借りないか?」 「バカヤロー、そんなことしたら足がつくだろ。てめぇ、分かって言ってるだろ?」 バレたか。 そんなこんなで歩いて、野宿して、また歩いて――。 累計で十六時間経った頃。 私たちはようやく次のコロニーにたどり着いた。 オイヒヴァー・コロニーと呼ばれるその場所は、アメリカという国が存在していた時代の西部開拓をモチーフにした街だ。 アウトローが多く、気が抜けないコロニーだと聞いている。 「早速、歓迎会らしいぜ」 ムゥロが前のコロニーで買った「刀」の柄に手をかけた。 マントのような服に隠しやすく、リーチもある刃物だ。 左に建つ建物の奥、そして二階だろうか。 相手は二人組。 私もポケットの奥に忍ばせていたパチンコを取り出した。 銃器は高くて買えないが、パチンコでも十分な殺傷力がある。 マントの中で弾の準備をしているところで――。 建物二階から長身の女が飛び出した。 「ひゃっはーッ! 二人合わせて一億クレジットの極悪人はっけーん!!」 距離にして十メートルほどだろうか。 女は二丁拳銃をぶっ放してきた。 「二人合わせて一億クレジットだと!」 私にも懸賞金が掛けられているということだ。 だが、嘆いている暇などない。 ムゥロは刀を抜いて刀身で銃撃を防ぐ。 ――が、弾数が多くすべては処理しきれない。 一発がマントをかすり、もう一発が頬を撫でる。 ムゥロは頬の血を気にもせず、突進――。 しようとして、私と繋がる手錠の鎖にガクンと引き戻される。 「てめ! 動き合わせろよ!」 私はムゥロを無視してパチンコを構える。 もともと練習していたので、三連射まで可能だ。 ――が、銃と比べれば発射までのスキが大きい。 女は遮蔽物となる壁に隠れた。 私が放った弾はすでに遅く、三連射は壁をえぐるだけに終わる。 次弾を補充しようとするが、その合間にムゥロが手錠の鎖を引いた。 「わっ! 弾が落ちたではないか!」 「言ってる場合か! 俺らも物陰に隠れるぞ。相手はドマネコン姉妹。もう一人がどこかにいる」 壁ぎわに寄ろうとした瞬間、目の前の窓が割れた。 言ってる傍からもう一人の刺客の登場だ。 「ほんとはこんなこと……やりたくないんだけど……」 ボソボソと呟く小柄の少女――恐らく妹は、サブマシンガンを構えていた。 戦力が違いすぎる! 「伏せろ!」 ムゥロの指示通り、二人一緒に伏せる。 コンマ五秒遅ければハチの巣だっただろう。 マシンガンの連射の中、身を低くして建物の裏に回る。 「マズいぞ。せっかくお前のパチンコはハッタリに使えたってのに。見せちまったせいで打つ手がねぇ」 「どちらにせよハッタリだけでは戦えない。ここは逃げるべきだ」 「わーってるよ、バカ。隠れながら全力で走るぞ」 迷っているヒマはない。 何故なら相手はこちらの武器を見た。 「パチンコ」と「刀」と戦力差が明確である以上、遠慮せずどんどん攻めてくるだろう。 私たちにできることは、とにかく素早く、的確に判断し、逃げ道を探すことしかないのだ。 来た道を帰る逃亡劇の中、背後で住人の悲鳴や爆発音が響く。 ドマネコン姉弟の戦い方は雑で、周囲の建造物や商品を巻き込み、住人をも殺していた。 「無茶苦茶だ!」 「クソ姉妹どもめ!」 私とムゥロの吐いた捨て台詞だけが空しく響く。
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