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「【あしあとドナーのご案内】ドナーが合えば、1時間5000歩単位でお貸しだしいたします。費用は、あなたの人生のうち、最低5000歩、それ以降は、登録いただいた歩数分だけ、お貸しだし可能です。本館地下1階の売店前に測定器を置いております。お気軽にご参加を!」
入院案内のパンフレットの中に、1枚のチラシが入っていた。臍帯血や骨髄ではなく、あしあとのドナーなんて・・・。
あしあとは、同じ体重で、同じ足のサイズでないとドナーと合致しないらしい。その代わり、ドナーが見つかれば、自分の登録した分だけ、入院した人が好きな時に歩けるらしい。
「あんたもそれを使うのかい?」
チラシを眺めていた僕に、隣に座っていたおじいさんが話かけてきた。杖をついて、椅子に腰かけて、チェックのハンチング帽がおしゃれなおじいさんだ。
「いえ、入院案内に入っていたので・・・」
「そうかい、私はそれを家内に1時間、使用したんじゃ。最期には、歩けんかったけど、5000歩、最後に散歩できたわい。」
「でも、病気だったら、歩けないんじゃないですか?」
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