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私はしがないお笑い芸人である。
得意なネタは”皆さんは信じないかもしれませんが私、去年までチンパンジーだったんです”と言うギャグであった。
勿論、ウケる訳もなく人気が出る事も無かった。だが夢を諦める事も出来なかった。
気が付けば、三十をとうに過ぎていたが鳴かず飛ばずのまま、後輩たちが次々と出世したり引退していく姿ばかりを見ていた。
「もう無理かな。親にも、もういい加減に実家継げって言われてるし、彼女はもう長い事できてないなぁ」
お笑いの養成所を卒業してどれくらい経っただろうか、バイトをしながら何とか食いつなぐ日々が続いていたが、先週等々ずっと契約してくれていたお笑い事務所に見放されてしまった。
その際、相方だった男も故郷に帰り、飲食店を開いて一から人生立て直すと言い別れる事となった。
「ワラワラ動画とかにネタUPしてるけど、相変わらず素人にも勝てやしねぇ。これしかねぇのに、コレ辞めたら何も残らない」
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