思い出、ひとつ

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 君と付き合う前に、遊園地に行った。少し高台にあって、観覧車からの眺めが良くて、薔薇園が有名なところ。  君は高いところが苦手なのに、ジェットコースターや観覧車は平気だと言った。曰く自分で歩かなければいけない空中回廊や吊り橋でなければ大丈夫なのだと。  だから私たちは沢山ジェットコースターに乗ったし、夜景を見るために観覧車にも乗った。  観覧車のてっぺんで、君が私に愛を告白してくれた時、なんてベタなシチュエーションなんだろうと思いつつ、天に登るほど嬉しくて、私は涙を浮かべて喜んだ。  観覧車に乗る前は隣に並んでも50cmくらい空いていた2人の距離は、観覧車を降りたら30cmもなくなっていた。  とても、とても幸せな距離だった。  閉園した遊園地を外から眺めて、私は付き合ってからも何度か訪れたこの場所にに想いを馳せる。    恥ずかしがる私をよそに、君は楽しそうにお揃いコーデを考えて、当日はお揃いの耳カチューシャも付けて、2人で沢山写真を撮ったね。  君が買ったばかりのポップコーンを盛大にこぼして、鳩にほとんど持っていかれてしまったことも、ウォーターアトラクションで襲いかかってくる水を上手く避けられなくて2人してびしょ濡れになった事も、全部全部覚えている。
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