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謎の女と古い家
ようやくそこにたどり着いた時には、既に辺りは真っ暗になっていた。
それはずいぶん古そうな家だった。時代劇でしか見かけないような茅葺き屋根に簡易な木の壁。夕食どきだからだろうか、食べ物の匂いがする。
思わず戸を叩くと、中から黒い着物を身にまとい、頭にかんざしを差した美しい20歳ぐらいの女が出てきた。
「どうか、なさいましたか?」
「実は、道に迷ってしまいまして」
「まあ、それはお困りでございましょう。私はこの辺には詳しいですから、明日にでもふもとまでお送りしましょう。今夜はどうぞお泊まり下さい」
「よ、良いのですか? ありがとうございます」
こうして俺はその家に上がり、囲炉裏のある部屋で、恐らくは鍋の一種であろうが、この世のものとは思えぬぜいたくな食事をいただいた。
すっかり身体も温まった頃、女が言った。
「それでは、今夜はそろそろおやすみなさいな。布団は隣の部屋にしいておきますね。但し、私の部屋は決して覗いてはなりませぬぞ……」
そう言い残し、女は奥の部屋へと消えた。暖かい暖炉の横で、俺は布団をかぶった。が、なんだか胸騒ぎがして眠れない。
「なんだろう、気味が悪いな……」
女は自分の部屋は見るなと言った。しかしそれが逆に気になった。
「どうしよう、こっそり見てみようかな……」
悪魔の誘いと言うのだろうか、俺はこっそりと部屋の中を見てみることにした。
足音をさせないように注意しつつ、俺は女の部屋の前に着いて障子をそっと開けると……
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