見守る

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「なに、これ?」  昨夜、見つけた瞬間に嫌な気分になった。  まるで二年前を彷彿させる、。  ただ二年前と少し違っていた。 ――二年前  その足跡はまるで我が家の浴室を覗いていたかのような位置にあった。  足跡がそこにしかないのは、そこだけ芝生が剥げてしまったからだ。  大きさ、形は男性用スニーカー。  気持ちが悪い、覗かれていた?  覚えがあった、ここ1か月ほど風呂に入っていると何となく視線を感じるのだ。  私だってバカではない、一階にあるお風呂場の窓の鍵くらい締めて入っている。  ただ我が家の浴室の窓枠がバカになっていた。  経年劣化か地震などの影響のせいかずれてきていて、きちんと閉まらずに風通しがいい、いや隙間風が入って来るのだ。  ほんの5ミリにも満たない小さな隙間。  だけどその隙間を内側から覗けばボンヤリと外の景色が見えることを前から知っていた。    母に相談しても「じゃあ次の休みに交番で相談してくるよ、勘違いだったら恥ずかしいじゃない?」と呑気すぎる。  次の休みだと? (らち)が明かない。  それまでの一時しのぎにしかならないが、私はその隙間をスポンジで埋めてみた。  浴槽を洗うスポンジを小さくつまんで詰めてみたのだ。  内側からスポンジの隙間を覗き確認、何も見えない。  これならば外からも見られまい、そう高を(くく)って、その日は優雅にトリートメントまでしていた。  俯きシャワーで頭をゆすぐ私の首筋を撫でる風、……風?!  恐々と顔を上げたら窓枠に詰まっていたはずのスポンジが無い、何で?! 「っ、誰っ?!」  持っていた手桶で咄嗟に窓にお湯をかけた。  それから気配を確認して窓を開けると誰もいなかった。  気のせい?  けれど見下ろした先には暗がりでも浴室の電気に照らされて足跡が浮かんでいた。  男性もののスニーカー跡、その横には窓枠に詰めてあったはずのスポンジが転がっていた。  ざわっと背筋が粟立ってすぐにトリートメントを洗い流して浴室を後にする。
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