見守る

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「なんで……、義足なんですか?」  絞り出した声は震え掠れていた。 「二年前でしたっけ? 三丁目のとこでデッカイ事故があったんですよ。右足一本で済んで良かった、死んでもおかしくなかったって言われたって」  周囲のざわめきが遠くに聞こえる気がした。 『三丁目のとこでデッカイ事故』 『急に飛び出して来たんだって』 『若い男の子』 『何で左足だけ?』 『まさか二年ぶりに覗き魔が?』 『右足義足なんですよ』 『右足一本で済んで良かった』  頭の中でグルグルと浮かんでは繋がる言葉。  パズルのピースのような、それを合わせたら浮かんできた、彼の笑顔。 「あ、の、私またあらためて、」  気付かれる前に、彼に見つかる前に。  ゆっくり静かに後退る私の背に誰かがぶつかった。 「すみませんっ、」  慌てて振り向いた先。   「大丈夫ですか?」  微笑んで右手に杖を持ち左足だけで立っていた彼は、 「ちゃんと見守ってないと危なっかしいですね、加藤さんは」  と、愛おしそうに目を細めた。 【完】  
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