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「はぁー、遺体のだけ、か…」
たこわさを肴に酒を流し込むパパの口から、等間隔で小言が漏れ出ている。頬は火照っていてまるで風呂上がりのようで、意識は仮想世界に片足を突っ込んでいるみたいだった。
「ねぇ、まーちゃん。パパ、またブツブツ言ってるね」
「そうだね、ちーちゃん」
私の一分後に生まれた双子のまーちゃんはバービー人形の着せ替えに夢中でパパには目も暮れていない。ここはお姉ちゃんとしてパパの話を聞いてあげなければ。
「ねぇパパ、また難しい事件? 警察のお仕事も大変だね」
「ちーちゃん、パパ困ってるんだよこの事件に。あぁーー可愛い娘たちよ、パパをたふけてくれぇー」
呂律が回らないパパがなんだか可哀想に見えてきた私は、酒臭い呼気が体内に入らないよう鼻をつまみ、話を聞くことにした。
「どんな事件なの?」
「えーと、あしあとが倒れた男のしかない現場に出くわしたんだー」
「犯人は?」
「わかんないからちーちゃんに話してるんだよ。倒れていた男は雨が降っていたから土に体半分埋もれていて、おまけに犯人のあしあとはその雨でさっぱり…。ほんと運のいい犯人だよ」
「倒れていた人の足跡はその雨で消えてなかったの?」
「倒れた体の下にあったんだ、うっ」
五分おきにパパの胃が暴れ出し吐き気を催していたが、ギリ耐えていた。
「倒れてた人の体とか調べた?」
「それは仲間の刑事が先に来て調べたんだってー」
「そうなんだ、じゃあちょっとまーちゃんと話し合って考えてみる!」
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