足あと

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 一つ、二つ、三つ。そしてそこで急に消える。  そんなはずはない。目の前の現実を否定するが、私にはそうなっているようにしか見えない。  雪の中、こんなにくっきりついた足あとは、きっと雪がやんでからついた足あとだろう。ここはバス停だからバスを降りたのだろうと思わせる最初の足あと、そのまま踏み出して二歩、三歩。それなのに四歩目はない。  この足の大きさや歩幅から想定できる体格の人が届くような位置には足あとがなく、捕まることができるようなものもない。
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