逃げる先にはフェチな君

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自分もよく不思議そうに見られるが、アルバイトには主に主婦が多い場所だ。 そう考えるもハッとして首を振る。 疑問など、どうせ期間限定で終われば居なくなってしまう相手。 深入りする必要はない。 「綾瀬さんが働くのは3階です。階段でもエレベーターでも好きな方で…今回は紹介がてら、階段でも大丈夫ですか?」 「はい!」 おぉ、元気な返事。 彼の前を歩きながら3階へ上がっていく。 ここはトイレ、ここは他部署、食堂は… 目につく場所を大まかに説明しながら、なんとなく目線を綾瀬さんに向ける。 彼が真面目な顔で、何かを集中して見ている。 目線を追えば俺の背中辺り… 「あの、なんか付いてます?」 自分でも身をよじって見るが解らない。 「あ、いや。糸くずに気を取られてしまって…すいません、説明中に余所見して」 慌てながらこちらを見る。 糸くず? 視界に入る場所には見当たらない。 「すみません、何処か見えなくて。取ってもらってもいいですか」 「えっ、あ、はい」 まだ緊張してるのかワタワタ慌ててる姿に申し訳なさを感じつつ、お願いしますと後ろを向く。 セーターとジーンズという薄手のせいか、腰の辺りから尻にかけて微かな感触を感じた。 くすぐったくて、思わず小さく笑ってしまう。
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