逃げる先にはフェチな君

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昼休み、1人屋上へ向かった。 扉を開ければ誰も居ない様子にホッとする。 限られた数のベンチが離れた場所にポツンポツンと置いてあるだけの、殺風景な場所。 たまに誰かと重なることもあるが、お互い離れて座るのが暗黙の了解だった。 「はー…疲れた」 扉から見えない、裏側に1箇所だけ置かれたベンチに腰掛けて伸びをする。 ここは特に人が来ないし、入り口からは見えない穴場だ。 俺のお気に入りの場所。 そよぐ風に目を閉じて、ベンチの背に寄りかかり首を反らせる。 ふわっと頭が浮いた感じが気持ちよくて、つい眠くなってしまいそうだ。 誰もいない場所は無防備にボンヤリしてしまう。 普段いかに気を張っているか、どれだけ社会に向いてない自分を誤魔化しているかを再認識する。 「あと4時間頑張ればいいだけ…終わったら久しぶりに電話してみるか…」 「彼女ですか?」 ガタンガタガタ 驚き過ぎて、飛び跳ねるようにベンチから落ちてしまった。 はぁはぁと胸元を押さえながら声のした方へ視線を向ける。
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