逃げる先にはフェチな君

9/13
前へ
/25ページ
次へ
「大丈夫ですか?!久世さん!」 いつの間にか、背後に綾瀬さんが来ていたらしい。 「あ…だ…いじょうぶ、です」 大丈夫なわけあるか! 驚かせんじゃねえよ馬鹿が! 脳内で罵声を浴びせながらも、なんとか口には出さずに答える。 また首を傾げて、こちらを見ながら考えている。 なんなんだよ。 そうやって首を傾げる犬みたいだな。 睨んでしまわないように、ふいっと視線を外す。 「別に、彼女なんていないです」 質問に返しながら立ち上がり、パンパンと尻もちをついた場所を叩いて汚れを落とす。 その様をやたら凝視されてるような感覚がして視線を戻せば。 一瞬だけ、穏やかじゃない色を滲ませた瞳とぶつかる。 え?何? 疑問と不安を感じて、そのまま固まってしまった。 その色は見たことがある…いや、そんなはずないと戸惑う。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加