Gears March

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 リンクは大通りに出た。そこには沢山のロボットが山積みになっていた。鉄くずになったもの。腕や足のとれたもの。様々である。それはまるでロボットたちの墓場のようであった。しかし、そのロボットたちのほとんどは未だ生きている。いや、これは正確ではないかもしれない。ロボットに生死などなく、壊れない限り、ロボットに終わりはない。そこに横たわり、山のように積み重なったロボットたちはちゃんと作動している。現在、動いていないだけなのである。  リンクがその山に近づくとロボットの山の中で二つのライトが光った。 「新入りか。」 ロボットの山の中からリンクを照らした二つの光が声を発した。そして、そのロボットの山がごそごそと動き出した。積みあがったロボットたちが崩れていく。ロボットの山の中からその光が正体を現した。  その二つの光はあるロボットの目だった。山の中から顔を出したそのロボットは、周りに横たわったままのロボットを掻き分けながらゆっくりとリンクの方へ進んできた。 「お前、名前は。」 リンクの前で止まったそのロボットがリンクに尋ねた。ロボットのわりに荒っぽい口調だった。 「名前…。」 リンクは初めて家族に会った日の事を思い出した。その家の主人はリンクを満足そうに眺めると「よし、お前はリンクだ。」と告げた。その日から、リンクはそう呼ばれるようになったのだった。 「リンクと申します。」 リンクはそのロボットに名乗った。 「リンク?何だそれ?俺はお前に型番を聞いたんだよ。」 そのロボットは苛立つように言うと、リンクの背中側に回った。 「Bu7109…。Bu7000番台ということは家庭用の執事型万能ロボットだな。炊事、洗濯、掃除、家庭の事は何でもこなしてくれる優れものだ。室内を汚さないように足跡さえ残さないように設計されている。それの個体番号109。終わりの09を取って、お前の所有者はリンクと呼んでいたわけだ。」 今まで、ずっとリンクと呼ばれていたため、自分の背中に型番が書かれている事など、とっくにリンクは忘れていた。だが、リンクが最高性能の執事型万能ロボットである事に間違いはない。
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