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そして、その夜。
--まただ。
また同じ夢だ。
同じ夢を二日続けて見たような経験は、これまで一度もなかった。
足跡をたどって振り返ると、そこには昨日夢に見た光景が、美しさを変えることなくただ一面に広がっていて。
その真ん中に、またあの少女がいた。
彼女は俺を見るなり、パッと笑顔になって俺に近づくと。
「大丈夫。君がいっぱい勉強して、一生懸命にお世話してくれてるの、ちゃんと分かってるよ」
心臓が、ドクンとはねた。
これは、夢だ。それは間違いない。
夢ではあるけど――――
現実でもあるのか……?
――夢って不思議だよな。
俺は唐突に、超常現象研究サークルにも所属するあいつの言葉を思い出した。
「いろんな夢ってあるけどさ、たまに同じ場所を何度も夢見ることってあるだろ? あれって一説によると、実は昔に行ったことのある場所だったり、写真とかで見たことがあったりっていう、自分の記憶から形成されてるものだって、言われてるんだけどさ」
彼は好奇心を抑えきれない少年のように、声色を弾ませて続ける。
「その他にも、あれは平行世界とか異世界とか、そういう場所と繋がっているって説もあるんだって。ってことはさ、夢ってもしかしたら、単に深層心理が具現化されたものってだけじゃないかもしれないんだよ」
すっげえ面白いだろ、と盛り上がる彼の目を見ることもなく、俺はパソコンに向かってキーボードを叩きながらその話を聞いていたが、その後に語られた言葉がかなり耳に残っている。
――そう考えたら、夢ってある種の繋ぎ目なのかもな。きっと、現実と非現実の世界を繋ぐ場所なんだよ。
心の底からの高ぶりを強く感じる。
鼓動が踊るように高まっていく。
どうしたの? と言うように首を傾げる彼女を前に、俺はまた何も声に出せないでいた。
いや――実際に出せなかった。
緊張や動揺から声が出なかったわけではない。俺が何か言葉を発しても、それは音にはならなかった。
どれだけ声を出そうとしても、なぜか彼女には届かなかった。
そんなもどかしい思いに苛まれながら、俺は夢から覚醒した。
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