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そんな朝、目を覚ました俺はいつものように庭に出た。鉢に植えてある薔薇のもとへ、朧気な思考のまま歩みを寄せる。
すると。
鉢から続く足跡を見つけた。
――これって……
弾かれたように顔を上げる。
頭上に広がるのは、満天の星空だった。
間違いない。ここ数か月間見ることのなかった、あの星たちだ。
高鳴る鼓動を感じながら視線を落とす。
久しぶりに見た足跡は確かに彼女のものだった。
でも、次の春はまだ先だ。
それなのに、この夢を見るということは……
振り返った先。
何度見ても飽きることのない、輝かしい夜空。
そして、それを背景にして立っている、バラの美少女。
彼女は俺を見つけると、一直線に手を伸ばしてこちらに駆け寄ってくる。
「やったぁ! また会えた……!」
どんな星の輝きにも負けない、その煌びやかな笑顔と温かな抱擁は、ここ数か月間頑張ってきた俺への一番の報いだった。
「ほんとにありがとう……! 君のおかげで私、もっと綺麗になれたし、また早く君に会えたんだよ」
嬉しそうに涙を浮かべて、彼女は微笑む。
そっか。また咲いてくれたんだ。
以前に薔薇の育て方を調べていたとき、俺は一つ気になる薔薇の咲き方を見つけた。それが返り咲きだ。しっかりと手入れをしていれば、次の開花までに薔薇は再び咲くことができる。可能性は絶対とまではいかないが、俺はそのためにできる限りの努力をした。
その結果、また彼女の笑顔を咲かせることができたんだ。
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