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そう。確かに俺は頑張った。
けど、微笑み返してこう思う。
違うよ。君も一緒に頑張ったんだ。
過酷な環境でも、しっかり元気に咲いてくれたんだ。
その言葉は……思いは伝わっただろうか。
彼女は笑みを絶やさずに頷いてくれた。
しかしその刹那、微笑んだ彼女の顔に。
かすかな暗がりが差したような気がした。
どうしたの、というように視線を送るが、彼女は黙ったままで。
ポンと頭を撫でると、彼女は俺に目を合わせて。
「でも、ごめんね……」
ポツリとそう言った。
ごめんね……?
目にたまった涙も、さっきのものとは少し違うようで。
「私が前、最後にあんなこと言ったから。余計に頑張らせちゃったかもって……頑張ってお世話してくれてるこの間は、私は何も返せないのに」
澄んだ彼女の瞳の奥は憂いで濡れていた。
「咲いている間しか会えない私のせいで、いろいろ負担とか、迷惑かけてるんじゃないかなって……実はちょっと心配だったの」
向けられる茶色の双眸から、静かに溢れた雫。
うつむいてすすり泣くその姿はまるで、堂々と綺麗に咲いていた花が、徐々に萎れていくかのような。そんな寂しさを感じさせた。
そんなこと、言わないでくれ。
今すぐにでも、そう言いたかった。
けど、この夢の中で、俺は無力だ。
俺の声は、いつまでも形にならない。
ただ、彼女の手を握ることしかできなかった。
かすかに顔を上げた彼女に頷いた俺は。
意を決して夢から覚めた。
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