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確かにここ数か月、俺は以前まで全く縁のなかった、薔薇の世話を日課にしてきた。
それは、もう一度元気に咲いてほしいから。
もう一度、綺麗な薔薇が見たいから。
もう一度、彼女に会いたいから。
それが俺の原動力だった。
何も負担なんて感じていない。むしろ、こんなに楽しいことが、一生懸命になれることがあるなんて、とさえ俺は思っていた。
それに、これを始めてからだろう。俺は、少し変わったとか、どこか活き活きしているとか、そう言われるようにさえなった。
誰だって、何か打ち込めるものがあるとか、この先に楽しみがあるとか、たったそれだけで、少しでも明るくなれる。
単純なことだけど、本当にそうなんだと思った。
窓を開けて、庭に出る。
鉢の元まで歩みを進めて立ち止まった。
上を見上げる。
広がっているのは、満天の星空――――
ではなく、白い雲が流れる薄青い朝の空。
下を見ても、そこに足跡はない。
だけど、彼女はきっとここにいる。
――毎朝あなたが私に、おはよう。って言ってくれるの、すごく楽しみにしてるんだよ。
いつか前に言われたあの言葉を思い出した。
俺だって。
毎朝ずっと、そう言えるのが楽しみだったんだ。
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