また、君が咲くなら

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 だから、五月になってそれを見たとき。  俺はその咲き姿にひたすら感嘆したのを覚えている。  目の前にあるのは、美しく咲いた数輪の赤い薔薇。  一月からずっと、寒い中でも手入れをしてきた、その頑張りが報われた瞬間だった。初めて自分で育てた薔薇は、今までに見た他のどんな薔薇よりも美しく、綺麗だった。  見た目はほとんど同じものでも、見る人がそれをどれほど大切に思っているかどうかで、その価値は変わる。  これがその人にとっての唯一無二、ということなのか。  志摩に聞かされた王子さまの話でも、そんなことを言ってたっけな。何とはなしに聞いていたが、あれはこういうことだったのか。また読んでみようかな。  今まで特に何事にも興味を持たなかったからか、この感覚が自分にはとても新鮮で。 「元気に咲いてくれてありがとう」  俺はふと、思った言葉を口にしていた。  それほどまでにこの達成感と、咲いてくれたことへの感謝に、心の中は満たされていたのだ。  俺はすぐにスマホで写真を撮って、志摩に自らの努力の結果を通達した。
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