アルエ

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 いる。やっぱり今日もいる。  学区内の書店に併設された、こぢんまりとしたCDショップの片隅にとある女学生の姿を発見した僕は、思わず息を呑んだ。  古びた十円玉を彷彿とさせる栗色のショートヘアに、アナクロ教師陣へのアンチテーゼとも取れる前衛的ミニスカスタイル。形のいい耳にはチープな有線イヤフォンと、そして軟骨ピアスがワンポイントできらり。いっちょまえにメイクまで施しており、もとより大人っぽい顔立ちがよりいっそう大人びて見える。  スクールカースト万年二番手を誇る没個性的量産型十七歳にとって彼女は、それはもう近寄りがたい人種に他ならなかった。他ならなかったのだが、一方でどうにかお近づきになれないものかと日がな懊悩する自分自身も確かに存在していた。  何せ彼女はこちら側の人間、つまり同志だったのだから。  彼女が華奢な肩から提げたネイビーブルーのスクールバッグは、いくつもの缶バッヂ類で賑々しく装飾されていた。  ニルヴァーナにマルーン5、ウィーザーにオアシス、グッド・シャーロット。缶バッヂ一つ一つには著名海外バンドのネームロゴがプリントされていて、そのラインナップときたら僕の内奥に鎮座ましますロックンロール・スピリットを大いに奮い立たせるものばかりであった。 「…………」  午後四時。俗っぽい、流行りの腐れラブソングが流れる中古CDコーナーの一角。胸元のヴィヴィアン・ウエストウッド風ネックレスを爪の長い指先で弄びながら、彼女がまるで精巧なリアルドールのような無表情さでアルバムCDの棚とにらめっこしている。片や僕は、そんな彼女を横目で見やりつつ、心で独りごちる。  友達になりたい……。  少女Xへの興味が加速度的に膨らむに連れ、それに比例するようにCDショップを訪れるペースも増えてゆくのであった。
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