近くて遠い片想い

25/30
248人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「他に何を知られてるのか怖いんですけど」 「……遊園地は苦手とか、映画は一人で行くのが好きだとか」  ――――自分の母親ながら、ほんとお喋りで嫌になる……。  がっくり肩を落としてうなだれていると 「って聞いてたから、じゃあ、亜美ちゃんとデートするならどこに行ったらいいんだろうな、って考えてた」 声がして、顔を上げると彼が笑ってた。 「俺の勝手な妄想だけどな。引っ越して家出たら、もし亜美ちゃんと付き合うにしても、今までよりは『監視』も少なくなるしちょっとはマシだろ。……バレンタインにあれもらってから、ずっと考えてた。言うなら、もう今しかねえなって」 「……でも、あたしバレンタインの時」 「それだけどな、あれ『皆さんで』ってもらったけど、結局俺がひとりで全部食ったんだよ」 「え?」 「親父に渡そうとしたら、それどう見ても余り物じゃねえだろ、って言って。だいたいそんなコジャレたもん、俺らの口には合わねえから、お前がもらっとけ、ってな。うまかった。ありがとな」  ――――ぽかん、と口を開けたまま固まってた自分に気付いて、慌てて口を閉じた。  社長……やっぱり分かってたんだ。  でも、とはいっても、あたしの本心は結局伝わってないわけだし……。 「あの、蓮次さん。あれは」  言いかけると 「悪い。亜美ちゃん。俺に先に喋らせてくれるか」 と彼が止めた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!