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「他に何を知られてるのか怖いんですけど」
「……遊園地は苦手とか、映画は一人で行くのが好きだとか」
――――自分の母親ながら、ほんとお喋りで嫌になる……。
がっくり肩を落としてうなだれていると
「って聞いてたから、じゃあ、亜美ちゃんとデートするならどこに行ったらいいんだろうな、って考えてた」
声がして、顔を上げると彼が笑ってた。
「俺の勝手な妄想だけどな。引っ越して家出たら、もし亜美ちゃんと付き合うにしても、今までよりは『監視』も少なくなるしちょっとはマシだろ。……バレンタインにあれもらってから、ずっと考えてた。言うなら、もう今しかねえなって」
「……でも、あたしバレンタインの時」
「それだけどな、あれ『皆さんで』ってもらったけど、結局俺がひとりで全部食ったんだよ」
「え?」
「親父に渡そうとしたら、それどう見ても余り物じゃねえだろ、って言って。だいたいそんなコジャレたもん、俺らの口には合わねえから、お前がもらっとけ、ってな。うまかった。ありがとな」
――――ぽかん、と口を開けたまま固まってた自分に気付いて、慌てて口を閉じた。
社長……やっぱり分かってたんだ。
でも、とはいっても、あたしの本心は結局伝わってないわけだし……。
「あの、蓮次さん。あれは」
言いかけると
「悪い。亜美ちゃん。俺に先に喋らせてくれるか」
と彼が止めた。
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